「姉さんちょっと頼みたい事があるんだけど?」 いつもはっきりものを言う真帆にしては歯切れが悪い口調で話している。 何か様子がおかしい真帆を心配して美帆はシナリオ書くペンを置き真帆を見つめる 「別に大した事じゃないわよ」 心配そうな美帆を察して真帆はあわてて美帆に話す。 「もうすぐバレンタインじゃない?手作りもいいかなぁなんて思って・・・・姉さん教えてくれない?」 「真帆ちゃんも王子さまが見つかったんですね?」 「やだそんなんじゃないって・・・・」 「別に照れなくてもいいじゃないですか?」 「もう・・・」 真帆がすねてしまったので美帆はそれ以上追求するのを止めた。 「どんな感じのにしますか?」 「そうね・・・・」 2人はあれこれと手作りチョコの特集が書かれた雑誌を見ながらあれこれと相談している。 結局、チョコレートケーキを作る事に決めた。 「じゃあ材料を買いに行きましょうか?」 真帆が持ってきた雑誌を片づけてから美帆と真帆は出かける事にした。 「そういえば姉さんと二人きりで買いに行くのって久しぶりよね?」 行く途中、真帆の方から美帆に話し掛けてきた。 「最近はお互い学校のお友達と出かける事が多いですからね。 それにお洋服なんかの趣味も変わりましたから行くお店も違いますからね」 高校に入るまではお互いの趣味が違っても一緒に買い物に行く事が多かったが、 入学してしばらくするとほとんど2人で行動を共にする事が少なくなっていた。 その原因を真帆は良く理解していた。 「どうせだったら男の子の好みも違ったらいいのに・・・・」 真帆は美帆に聞こえない声で呟いていた。 「何かいいましたか?」 「ううーん何でもないそれより姉さんも手作りのチョコあげないの?」 真帆は美帆に悟られない様に話題を変えた。 「どうでしょう?」 「例の王子様くらいにはあげるんでしょ?」 そう言われ、美帆は急に表情を固くしてしまった。 「その事は帰ったらお話します。先にお買い物をすませてしまいましょう。」 そう言うとさっさと店の中へ入って行った 真帆はあわてて後を追った 帰宅すると美帆はまっすぐ台所へ向かい荷物を置くとそのままコートを脱ぎエプロンをつける。 てっきり先ほどの話の続きを部屋でするものだと思っていたが真帆は仕方なく美帆から料理を習う事にした。 思ったよりも真帆の飲み込みが早く美帆が予想していたよりも時間をかけずにケーキが出来上った。 途中真帆分量を何度か間違えるたびに美帆が配分を調整したので二人分作るはずが五人分になってしまった 二つは両親に食べて貰う事にして三つを二人で分けることにした。 台所を片付けるとそれぞれ飲み物とケーキを持って美帆の部屋へ向かう。 部屋の中心には小さなテーブルがすで準備されていた 二人はその上にカップとケーキを置いた。 お互いが向き合う位置でクッションに腰掛ける。 「それじゃ食べましょうか?」 「うん、そうだね。」 二人は同時にケーキを口に運ぶ。 はじめて二人で作ったにしては、まずまずの出来だった。 美帆はケーキを飲み込むと大きく頷いた。 「これならきっともらわれる方も喜ばれますよ。・・・・どうしたんですか?」 真帆はフォークを口にくわえたまま眉をひそめている。 「これじゃ甘すぎ・・・」 「そうですか?」 ケーキを一口食べてから美帆が感想を述べる。 「そうですね。市販のケーキに比べて随分甘味を抑えてあると思いますけど?」 「それはそう何だけど・・・・」 そう言われてもまだ納得した様子ではなかった。 ケーキとにらめっこをしている真帆を眺めながら何か良い案がないか考えてみた。 「だったらチョコをビターチョコにしてお砂糖とココアパウターの比率をに変えたらどうですか?」 真帆はフォークを口にくわえたまま少し止まったままでいる。 「・・・それなら甘さが押さえられそうね」 「でも苦くなってしまいますよ。」 「いいのこれくらいのほうがあいつにはちょうどいいんだから・・・・」 そう言った真帆の表情が寂しげだったのを美帆は見逃さなかった しかし美帆は何も言わずに黙ってケーキを食べていた。 「そういえばさっきの話の続きだけど姉さんは手作りチョコをあげないの?」 「誰にですか?」 美帆はカップに少し口をつけながら聞き返した。 「誰って高校に入った時運命の人に出会ったってはしゃいでいた人」 「あの人ですか?多分一応渡すと思いますよ」 「何それ」 美帆の気のない返事に真帆は少し腹が立った。 だがそんな真帆にお構い無しに美帆は紅茶を飲んでいる。 「理由わかんない、姉さん彼の事どう思っているのよ。」 「どうって・・・仲の良いお友達だと思ってますけど・・・」 「じゃなんで彼とデートなんかしてるの?」 「それは・・・・」 美帆は黙ったまま、真帆から顔を背けて下を向いたままだった。 「もういい」 真帆はそのまま美帆の部屋から出ていった。 2/14、バレンタイン当日 真帆はこの日美帆に黙ってひびきの高校の制服を借りた。 当然美帆はひびきの高校へ登校している為、下手をすれば2人の事がばれてしまうかも知れなかった。 高校での最後のバレンタイン 真帆は自分の気持ちにけじめをつけるべくひびきの高校へと向った。 ”たしかあいつはH組だったよね” 真帆は演劇部の部室で放課後になるのを待ってから行動に移った。 クラスにはまだほとんどの生徒達が残っている。 真帆は教室の中をのぞきあいつを捜した。 さすがに席の場所まではわからなかったが程なく見つける事ができた。 真帆は意を決して声をかける事にする。 「あの青山さん」 真帆に気づき青山は真帆の側までやってくる。 「どうしたの?」 声をかける青山は心なしか笑みが零れている。 そんな様子に真帆はほんの少し心を痛める。 「あの、これ受け取って貰えますか?」 「ありがとう。すごく嬉しいよ。」 差し出されたチョコを受け取ると青山の顔は満面の笑みが浮かんでいた。 「・・・・」 その笑顔を見ているだけで真帆の胸は急に苦しくなっていた。 「じゃあ・・・・部活がありますから失礼しますね・・・」 真帆は踵を返し急いで教室を出ていく。 急ぎ足で下を向いたまま廊下を歩く。 ドン 真帆の頭に衝撃が走る。 「ゴメンなさい」 慌てて美帆の振りをして謝った。 顔を上げるとそこには見知った顔があった。 「あっ景央」 ぶつかった相手は真帆たちの事を知っている和井景央だった。 「よ!何やってんだって・・・ここじゃまずいから場所移すか」 そう小声で言って真帆の手を引っ張る。 「ちょっと」 小声で真帆は抗議するが景央は無視してそのまま引っ張っていった。 人気のない中庭へつくとベンチに座る。 「なにやってんの?今日美帆ちゃんも来てるのに」 「うるさいなぁ。景央には関係ないじゃん」 思わず素で話をしてしまい周りを見回す。 「そんなに心配しなくても大丈夫だって」 「うん・・・・」 景央は真帆の様子が変なのにようやく気がついた。 「なんかあったのか?俺で良ければ相談乗るけど・・・自分の中に溜めても解決しないよ」 大きく深呼吸をしてから真帆は景央に想いを打ち明ける事にする。 「そういう事か・・・」 「うん」 打ち明けた真帆の顔は先ほどよりは明るくなっていた。 「でも、美帆ちゃん 昼休みにあいつにもチョコあげてたぞ」 「うそだって、あいつ何にも言わなかったよ!」 真帆は景央の言葉を疑った。 「ほんとだってみんなと一緒に貰ってたのみたから」 「一緒って、姉さんの本命じゃないの?」 美帆の本命が青山じゃないかも知れないということに真帆は淡い期待を寄せていた。 「それは絶対ない」 「だって・・・そんな事なんで景央にわかるのよ」 はっきりと断言する景央に真帆は少し戸惑いの表情を浮かべるが景央の言葉が真実かどうか見極める必要があった。 「どうでもいいだろそんな事は・・・・」 景央は真帆から顔を背けた。 ”もしかして・・・・そっか” 「あっははは」 真帆は美帆の本命が青山でない事を悟ると胸のわだかまりが無くなっていた。 「現金な奴だな」 「ほっといて」 景央が横目で見た真帆の表情はいつもの明るさを取り戻していた。 「案外、ばれてんじゃないの?歩に」 「えっ!」 突然の景央の発言に真帆が驚いた。 「本気で好きになったらどんな些細な仕草でも気づくもんだろう?俺みたく」 「・・・・」 真帆は黙ったまま景央の話を聞いていた。 「そういや最近 美帆ちゃんは歩とデートしてるのか?」 「そう言えばしてないな。2/11には私が行ったし・・・」 「それっていつ約束した?」 「うーんと確か1/7かな?」 その答えを聞くと景央は突然笑い出す。 真帆には景央の笑う理由がまったくわからなかった。 「なに笑ってんのよ」 「んー?2/11だったら俺と美帆ちゃんで美術館に出かけたよ。しかも約束したの1/14だし」 景央が言っている意味がまだ理解できないようで真帆は難しい顔をしている。 「まだわかんない?真帆の気持ちを美帆ちゃんは知ってるんだよ。」 「・・・・嘘」 真帆は景央の意外な発言に言葉をなくす。 「じゃなきゃ、歩からの誘いを真帆に託して俺と出かけないだろう?」 「・・・・・」 真帆は黙ったままうつむいてしまった。 「それじゃあ俺 行くから・・・・・美帆ちゃんを言い訳にしながら本当の気持ちを隠してるだろう?もっと正直になんなきゃダメだぞ。」 景央は真帆を残しそのまま言ってしまった。 「そっか・・・・知ってたんだ。姉さん・・・・」 ”本当の気持ちを隠してるだろう?” 景央の言葉を思い出している。 真帆は心を決めてベンチから立ち上がり帰宅する事にした。 ”まずは姉さんに私の気持ちを打ち明けよう。そして彼にほんとの私を見てもらわなきゃ” ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 後書きの様なもの 苦情は一切受け付けませんのであしからず(^^; ちょい萌えになったかな〜なんて反省は全然してません(おぃ このSS(ほんとに短い(^^;)は完全非ひびのつもりで書いたのでその辺は御了承って事で・・・ 時間が足りなくってずいぶん中途半端ですね。 まあこれに時間をかけてメインをおろそかにするのはまずいので・・・・・ そういやWFのSS投稿って俺しかしてないのでは? 柊さんは何やってるんでしょう? 前回はクリスマス(ギリギリ投稿だったっけ・・・)、今回はVDです。 登場人物について 白雪姉妹・・・・説明いらないよね(^^) 青山 歩・・・・・モデルは、わかる人にはわかる(謎) 和井 景央・・・YKOのひび本名です。景央はそのまんま”けいおう”って読みます