『なぁ〜〜〜〜〜〜』
帰宅途中、花桜梨の足元にふさふさでもこもこでちょっぴり丸めの仔猫がじゃれ付いて来た。
近所に住む飼い猫である。時々おやつなどを上げているからだろうか、花桜梨の姿を見掛けると、歓びを体いっぱいに表現して飛び付いて来るのだ。
なでなでなで・・・。
『んなぁ〜〜〜〜〜〜〜〜』
花桜梨が体を屈めて頭を撫でてやると、仔猫は気持ちよさげに目を細めた。
「・・・・・・」
花桜梨の口元に優しげな笑みが浮かぶ。
無邪気で可愛い仔猫。
花桜梨はそんな仔猫が好きだった。
「・・・八重さ〜〜〜〜ん!」
帰宅途中、花桜梨の姿を見掛けた楓子は、前髪をひょこひょこ揺らしながら駆け寄って来た。
時々、こうやって偶然帰り道で出会った時などは一緒に帰る仲である。楓子は花桜梨の腕に飛び付くと、体いっぱいで歓びを表現してくる。
「えへへ・・・、偶然だね! 一緒に帰ろ・・・、ね?」
「・・・・・・」
にこにこと笑いかけてくる楓子に小さく頷く。
「じゃあ、しゅっぱ〜つっ!」
なでなでなで・・・。
「・・・え? なぁに・・・?」
なんとなく頭を撫でてみると、きょとん、と楓子は目を瞬いた。
「・・・・・・」
「・・・? まぁ良いや! ねぇねぇ、この間行ったクレープ屋さん、寄って行こっ!」
花桜梨の口元に優しげな笑みが浮かぶ。
無邪気で可愛い楓子。
花桜梨の数少ない友人である。
「・・・・・・」
花桜梨の行く手から、近所に住む三毛猫が軽やかにやって来た。
三毛猫は花桜梨の前で止まると、『にゃ〜』と短く鳴いた。
「・・・・・・」
花桜梨は鞄を探り、ビスケットを一枚取り出す。
『にゃん♪』
途端に愛想が良くなる三毛猫。花桜梨がビスケットを差し出すと、ふんふんと鼻を鳴らしながら近寄ってくる。
ひょい。
花桜梨は三毛猫の鼻先で、ビスケットを引っ込めた。
『・・・にゃ〜』
ちょっぴり哀しそうな声で鳴く三毛猫の前で、花桜梨はビスケットを口にする。
『・・・・・・にゃー!!』
三毛猫は怒ったように一声鳴くと、ぷいとそっぽを向いて行ってしまった。
・・・だがあの三毛猫は、また花桜梨を見掛けたら寄って来るだろう。
そんな三毛猫が、花桜梨は好きだった。
「・・・・・・」
花桜梨の行く手から、赤井ほむらが飄々とやって来た。
ほむらは花桜梨の前で止まると、「いよぅ!」と短く挨拶した。
「・・・・・・」
花桜梨は鞄を探り、ビスケットを一枚取り出す。
「お、なんだ、くれるのかぁ?」
途端に愛想が良くなるほむら。花桜梨がビスケットを差し出すと、にゃははと笑いながら近寄ってくる。
「いやぁ、お前って実は良い奴だったんだなぁ〜!」
ひょい。
花桜梨は伸ばされたほむらの手先から、ビスケットを引っ込めた。
「・・・な、なんだよ!? おい、くれよぉ〜!!」
ちょっぴり哀しそうな声で言うほむらの前で、花桜梨はビスケットを口にする。
ぼりぼりぼり・・・。
「あーーーーーーーーーーーーー!! てめぇ、このほむら様をおちょくるとは良〜い度胸だっ! 覚えてろよっ!」
ほむらは怒ったように身を捩って叫ぶと、ふんとそっぽを向いて行ってしまった。
・・・だがほむらは、また花桜梨を見掛けたら寄って来るだろう。
そんなほむらは、花桜梨の数少ない友人である。