夢なんかじゃない
Written by TUBASA 
注意:主人公の名前の所はご自分の名前を想像して読んで下さい。

いつも側にいる人が突然いなくなるということは、
思っていたよりも辛いことだと思ったのは、
夏休みが終わり、新学期が始まった時からだった…。
 

「おい聞いたか…佐倉さん転校したんだってさ」
匠がいつもの明るい顔とは正反対の…暗く沈んだ声で告げた。
俺はその匠の言葉に体体中の血がさーっと引いていくような感覚に
襲われた。

「佐倉さんが…!?どこに転校したんだ?」
匠の肩を掴み、揺さぶる。すると匠は落ち着けと俺をなだめた。

「今調べてる。わかったらちゃんと教えるから」
そう言った匠の顔はいつも通りの自信満々で、ポーカフェイスの匠に戻っていた。

「ごめん。たのむな…」
 

いままで俺の側にあたりまえのようにいてくれた佐倉さん…。
そんな彼女が突然目の前からいなくなってしまった。
その事実を彼女のいない教室、そして彼女の元気な声が響かない
部活中に、痛いほど実感させられた。
いつのまにか、俺の心の中には佐倉楓子という女の子の存在が、
必要不可欠になっていた…。

「最近元気ないみたいだけど、大丈夫??」
光が最近何事にもやる気のない俺の様子を心配して
声をかけてくれた。やっぱ優しいよな…光。

「大丈夫だよ」
あまり心配をかけても…と思って俺は努めて元気に答えた。

「うそ。全然大丈夫じゃないでしょ?」
…うっ。やっぱり見透かされたか…。こういうときに限って
光はするどいんだよな…。

「どうせ、佐倉さんがいないくて、元気ないんでしょ?」

「…」

「全く。君らしくないよ」

「え…?」

「言いたいことがあったらちゃんと言う。それが私の知ってる君だよ」

「言いたいこと…か…」

「佐倉さん、きっと待ってるよ」

「ありがとう…。俺はいつもお前に背中押されてばっかりいるな…」
俺がそう言うと、光は照れたように笑うと

「私は〇〇くんの笑ってる顔が好きだから、早く元気になるんだよっ!」
と言った。

「ああ。わかった」

「…さ、思い立ったらすぐ行動!!残りの授業さぼって佐倉さんの所に行っておいでよ」

「え?でもまずいだろ?」

「後の事はまかせなさいって。佐倉さんの行ってる高校遠いんでしょ?
今行かないとすれ違っちゃうよ?」
あれから俺は匠に、佐倉さんの通っている高校の場所などを聞いていたのだ。

「じゃあ…、頼むな!」
俺は後のことを光に頼むと、帰る支度をして走って学校を出た。

佐倉さんの通っている大門高校は、ひびきの高校からバス・電車を乗り継いで
一時間はかかる場所にある。今の時間は3時だから、たぶんギリギリで
佐倉さんに会えるはずだ。
…俺はとにかく佐倉さんに会うために走った。今きっと佐倉さんに会ってこの想いを
言わないと、もう一生彼女には伝えることが出来ない…。そんな気がしたからだ。
 

「はぁ…はぁ…」
ちょうど俺が大門高校についた時間は、大門高校の生徒が帰宅する時間だったらしく、
制服を着た高校生がわらわらと、校舎の中から出てきた。
俺は走りつかれて、その場にへたり込むように座った。なんとなく周りの目が
気になるけど、バス・電車と乗り継いだうえに、ここまで全速力で来るのは
さすがに辛い…。

「〇〇さん!?」
疲れ果てた俺の前に現れたのは…、俺の一番会いたかった人…、佐倉さんだった。

「何でここにって…、汗びっしょりじゃないですか…。大丈夫ですか?」
心配そうな顔で、座りこんでいる俺に合わせてしゃがみ込むと、
走って汗をかいた俺のために白いハンカチを差し出してくれた。

「ありがとう」
そのハンカチを受け取った。

「俺さ…、佐倉さんに会いに来たんだ」
俺は佐倉さんにここまで来た理由を告げた。

「…私に?!」

「そう。佐倉さんに」

「…」
驚いたような顔をする佐倉さん。

「迷惑…だったかな?」
とりあえず、二人でその場に座り込んでいるのも変なので、立上りながら俺は聞いた。

「ううん。そんなことない。すっごく嬉しい」

「ならよかった…。俺君に会って…そして伝えたいことがあったんだ」

「伝えたいこと?」

「うん。俺…佐倉さんのこと…好きなんだ」
俺がそう言った瞬間、佐倉さんはまた驚いたような顔をすると、
目元に涙を浮かべながら

「…本当?」
と訪ねてきた。俺が本当だよ。と言うと

「…嬉しい…。私も…ずっと〇〇さんのこと好きでした…。ううん。
今も好き…。ずっと…ずっと後悔してたの。あの花火大会の時に
あなたに好きって言えなくて。だからこうしてあなたが会いに来てくれて、
好きだって言ってくれるなんて …。夢みたい…」
俺の大好きな笑顔で佐倉さんは言ってくれた…。

「夢なんかじゃないよ」
俺は佐倉さんを抱きしめながらつぶやいた。

学校も違うし会う機会も少ないだろうけど、離れていてもどんなことがあっても
きっと平気だ。二人の気持ちが、いつまでも一つなら…。

−THE END−
お詫び:なんだかすごく変なお話ですみませんでした。
楓子ちゃん全然可愛くないですし(汗)やっぱり無謀なことは
しないほうがいいということでしょうか…(笑)
こんなのでももしよかったら感想くださいねv
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