「電話の向こう」
〜愛しさとせつなさの降り積もる夜〜
楓子ちゃんを守る会 No.27 川鍋 保
ぴっぽっぱっぽっぴっぴっぽっ・・・・・・
とぅるるるる・・・・とぅるるるる
がちゃ・・・・
「はい、佐倉です」
午後10時ちょうど
いつからだろう、毎日この時間、自分は佐倉さんへ定時連絡のように電話をするようになっていた
「あっ、もしもし佐倉さん? 川鍋です。」
「川鍋さん? また掛けてきてくれたんだ! ありがとね」
用があるわけじゃない、何を話す訳でもない、ただなんとなく佐倉さんの声が聞きたくて、毎日同じ時間に掛けてしまう・・・・
「元気だった??」
「うん!元気だよ。川鍋さんは?」
「うん、自分も元気だよ・・・・」
(佐倉さんがいればね・・・)なんて声にだせないことを思いながら・・・・
「そういえば、今日学校でね・・・・」
たわいもない会話・・・・まるで、今日こんなことがあったんだよって感じのまるで交換日記のような・・・・
そんな時間がとても待ち遠しい。
今の自分にとって一日で一番大切で楽しい時間・・・・
きっと彼女も・・・・
「ねぇ?・・・・ねぇ、聞いてる??」
「えっ、ああ聞いてるよ。 部活でまたやっちゃったんだよね」
「う〜〜、そんな言いかたしなくても〜〜」
電話の向こうで膨れているのが分かる。
でも、そんな愛らしい彼女の仕草を想像して、思わず吹き出しそうになる。
でも、いつからだろうな、こんな風に彼女と話すようになったのは・・・・
「ごめん、ごめん。」
「あ〜〜っ、笑ってるぅ、笑ってるでしょ〜〜」
「笑ってない、笑って・・・ない。」
「ほら〜、笑ってるぅ ひどいんだ〜」
「ごめん、ごめん。 でも、佐倉さんらしいなって」
「なんか、褒められているような、けなされているような・・・・複雑かも」
「ほめてるんだよ・・・・でも、ほんと元気そうでよかったよ」
・・・・そうだっ!
あの日、修学旅行の後、電話番号を聞いて掛けたのが・・・・
あの時の佐倉さんは、今と違っていつもとはなにかが違ってた。
なにか、寂しそうな、元気がないような・・・・
それで、気になって次の日、また次の日と掛けているうちに毎日電話するようになったんだっけ。
「うん、元気だよ・・・・ありがとうね。」
「うん、こちらこそ、ありがとうね・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
沈黙・・・・でも、そんな時間もなんかうれしい。
受話器越しに聞こえる彼女の息遣い、TVや音楽、そしてまだ見ぬ、知らない土地の音・・・・
耳をすませば聞こえてくる・・・・
彼女はこんなとこに住んでるのかな?などと思いを巡らせてみる。
そして・・・・なによりこうして電話で彼女とつながっている、今この時、この瞬間を一緒に過ごしている。
遠く離れていても、なにかとても満たされた気持ちになれる・・・・
幸せな気持ちになれる。
彼女はどんな風にこの時を過ごしているのだろう。
電話の向こうでも同じ気持ちでいてくれているのだろうか・・・・
「・・・・そういえばさ」
そんな沈黙の時間を終わりにするのもいつも自分・・・・
「そういえばさ、もうすぐ佐倉さんの誕生日だね。」
「うん、覚えててくれたんだ〜、嬉しいな〜」
「忘れる訳ないじゃない、自分の誕生日忘れても、佐倉さんの誕生日は忘れないよ」
「えへへ、そうなんだ。 じゃあ、私が川鍋さんの誕生日覚えてるからね。」
「ははっ、そっか、じゃあよろしくね」
「うん、大丈夫だからね。 そういえば誕生日会してくれるんだよね、必ず行くからね。」
「うん、楽しみにしているからね。でもさ、遠いのにわざわざ来てくれるなんて・・・・ありがとうね」
「こっちこそありがとね!私のために・・・・私もみんなに会いたいし、それに・・・・」
「それに・・・・なに?」
「な、なんでもない。なんでもないよ。」
「気になるな〜」
「ほ、本当になんでもないって、たいしたことじゃないよ。だから・・・・気にしないでね。」
「まいっか、じゃあそういうことにしとくか」
「うん!ごめんね。・・・・(ぼそぼそ)」
「なんか言った??よく聞こえなかったよ〜」
「だ、だから、なんでもないって・・・・」
そんな、会話が続く・・・・
今の自分には一番大切で楽しい時間・・・・
彼女にとっても楽しい時間であってほしい。
一番大切な時間であってほしい・・・・
・・・・しかし、楽しい時間にも終わりがくる。
自分が一日で一番嫌いな時間が近付いてきている・・・・
「あっ、もうこんな時間だね、すっかり長電話しちゃった。 ごめんね」
「ううん、こっちこそ長電話になっちゃってごめんね・・・・」
「また、かけてきてくれるよね?」
「うん、またかけるよ!」
「きっと・・・・きっとだよ。」
さっきまでとは違った寂しげな声。
大丈夫、自分が守ってあげるよ・・・そんなことを思ってしまう瞬間・・・・
星に願いをかけたくなる、そんな瞬間。
「じゃあ」
「また明日ね」「また明日ね」
声がそろってしまう。
思わず二人で笑ってしまう・・・・
そっか、彼女も自分からの電話を待っててくれているんだ・・・・そんな風に思いたくなってしまう。
また明日ね・・・・二人で一緒に言えばまた話せる、そしていつかまた会うことができる、そんな不思議な呪文。今はそんなことも信じてみたい、そんな気分。
「それじゃあ、また」
「うん、また・・・・ね おやすみ」
「うん、おやすみ・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
お互いに電話を切れずに、受話器を持ったままで・・・・
せつなさを、寂しさをかみしめながら
自分から電話を切れずにいる。
どっちかが切るのを待っている。
「ねぇ、切ってよ〜」
「うん、じゃあ切るよ」
「あっ! ちょっと待って!」
「えっ???」
「もうちょっと・・・・もうちょっとだけ、話がしたいな・・・・ね、いいでしょ?」
「うん、いいよ。 自分も、もう少し話がしたかったし・・・・」
「えへへ、そっか。 ありがとね。」
・・・・・そして・・・・・
「じゃあほんとに、ほんとにおやすみなさい。」
「おやすみ・・・・また、明日ね」
「うん!、また明日・・・・」
ぴっ・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
電話・・・・不思議なのものだけど、はるか離れていても、すぐそばにいるような気がする。
切った後でも、なにか暖かい気持ちになれる。
いつまでも、佐倉さんの柔らかく、優しい声が耳に残っている。
電話の向こうの佐倉さんはどんな気持ちでいてくれているのかな?
同じ気持ちでいてくれたら・・・・
そしてまた明日、同じ時間に彼女に電話することだろう。
どんなに離れていても、同じ時間を共有するために・・・・
愛しさとせつなさが入り交じり降り積もる夜に・・・
あとがき
いやいや、SS初挑戦ということで、なんか自分なりには書けたような気がするのですが・・・・なんか中途半端になってしまいました。
もしよかったら、川鍋のところをあなたの名前を置き換えて読んでいただければいいとおもいます。
すると・・・・ほら、耳元で佐倉さんの声が(笑)
なんにしても、内容は某巨匠のようにはいかないので、やっぱり切り売りするしかないということになってしまいました(笑)
かなり内容的には、身の危険を感じる内容になったような気もしますが、初めてということでその辺はゆるしたってください。(笑)
こらこら、そこそこ、その鉄パイプはどこからひろってきたのかな??(汗)
また、なにか機会があったら書いてみたいなと思っていますので、その時まで勉強しときたいとおもいます。
最後に・・・・つたないSSに最後まで付き合ってくれてありがとうございました。
もし、よろしかったら、ご意見・ご感想などをいただけるとうれしいです。