…その時、桐生は自分が間違った事に気が付いていた。
自分のしていることの過ちを覚えたのだ。

「佐倉 楓子」彼女とは、中学以来の知り合いで、現在も桐生と同じひびきの高校に所属している。
しかし、彼女のことは、中学では知ってるだけであって、お互いに接しあう事は殆ど無かった。
そんな彼女のことを知らずに桐生が野球部に入ってから4日後の出来事…。

練習が始まる前に藤城という鬼コーチが部活生を呼び出す。
藤城「おい、全員集まれ。今日から内の野球部にマネージャーが入る事となった。」
そうなると一気に部活生はざわつく
部活生「…え? 誰なんだ? 女の子?」「マジで、いいねぇ(笑)」

藤城「おい! 静かにしやがれや!」
そういうと鬼コーチは静かに彼女を呼ぶ。
藤城「…さぁ、こっちに来い。」
佐倉「あ、はじめまして、今日からここの野球部のマネージャになります、佐倉 楓子と言います。」
藤城「さぁ、今日からお前等、この子にお世話になるんだ。挨拶をしっかりしとけよな!」
と、部活生を投げ捨てたかのように言うと、部活生に練習の準備を命ずる。

佐倉「桐生さん?」
桐生「…!?」
佐倉「部活…あなたと一緒なんだね、わたしちょっとびっくりしちゃった。」
桐生「…ああ、俺もだ…」
…2人がここで接しあうと、その言葉を言い合うと同時に、なぜか気まずくなる…
その気まずい中しばらくしないうちに鬼コーチが…
藤城「おい!! 桐生!! なにそんなところでボーっとしてんだボケ!! さっさと準備しやがれやカス!!」
桐生「は、はい!!」
…そういわれると、彼女には何も言わず、桐生はすぐ部室に行き、ライン引きなどの準備を行う…
藤城「おい、佐倉。お前も準備する事があるだろ?」
佐倉「え、はい、ごめんなさい!」
…と言う風に、2人はそれぞれ準備に取りかかる。

そのような2人の中は気まずい雰囲気な中の部活の日々、「なぜ鬼コーチは彼女への厳しさが控え間なんだ?」とも思ったことも…。

そんな部活の日々のある日の夜。
基礎運動能力が物足りないと他の部活生より30分鬼コーチに残されて練習させられた時の事。
ようやく居残り練習を終えて、部室に戻った時、明日の朝練の準備をスムーズにするためか、彼女が1人部室の整理をしていた。
桐生「!?」
佐倉「…誰!?」
ビックリした彼女に桐生も驚く。
佐倉「もう! ビックリしちゃったじゃないの! って何であなたがここに?」
桐生「わ、悪かったな…俺は鬼コーチに居残りされてたんだ。」
…そういうと、彼女はプっと笑った。
桐生「何がおかしいんだよ?」
佐倉「だって、もう他の部活生は基礎体力ついてきてるのに、あなただけ遅れちゃってるんだモンっ。」
桐生「……」
…桐生は何ともいえなかった…

それぞれ、整理、片付けが終わると、帰る準備をし始めた。
空は真っ暗になっていた。もうこんな時間は遅いと、
桐生は女の子が暗い夜を1人で帰すのはまずいという責任を感じ、彼女と一緒に帰ることとした。
桐生「今日は夜遅いから、一緒に帰らないか?」
佐倉「…そうよね。その方が安心できるからお願いしようかな。」
と、2人で下校することになる。その途中、彼女から口を開く。
佐倉「あなたとは、確か中学のころから同じになれたのよね。」
桐生「…まあね…」
と言う風に語り合いが続く。
佐倉「ねぇ? 何であなたは高校に入って、野球部に入ったの?」
桐生はそれを聞かれると、一瞬驚きを隠し、深く考え込む…
桐生「それは…、俺は中学のころは何もしなかかったけど、高校ではなにかやっておきたいなと思って野球部に入ってみたんだけど…」
桐生「…なんか単純な答え方な気がするけど…」

佐倉「じゃあ、根性はある方なんだ。」
桐生「根性?」
桐生は自分の根性については殆ど知らなかった、と言うよりどっちかと言うと自分では根性無しとも思っていた。
佐倉「桐生さんは、根性あるみたいだから、大丈夫だよ。」
桐生「え? どういうこと?」
佐倉「それはあなた次第。とにかくがんばらなきゃ。」
桐生「……」
こうやって2人は野球部の事について接しながら下校した…

それから次の練習日以降も、そろそろ桐生も基礎体力がついたころだったが、
鬼コーチのもと、まだまだ1年生は基礎トレーニングの日々に励んでいた。
しかし、桐生の遅れも支援するかのように、いい仲間達が桐生をサポートしていく。

それから約3ヵ月後の夏休み合宿の事。
すでに1年生も基礎トレーニングはすでに見についている。
とある合宿の1日、今日はバッティングの練習を行う事になっている。
ピッチャーは先輩部活生。1年生は1回ずつ並んで打っていく。
空振りする者もいれば、綺麗にヒットする者もいるし、ファールになる者もいる。
そして、桐生が打つ番、…空振り。
鬼コーチのヤジが飛ぶ。
そのように1年生のバッティングが繰り返し続くが、
またもや桐生は空振り。

また…

また…

また…

もうだめだ…

くそっ…

えーい!! やってられるか!!

心の中でそんな思いがした。

そして…

うう、もう限界だ…

藤城「桐生!! おめー!!それでは三振だ!! なにやってんだよ馬鹿!! やめろ!! やめちまえ!! いらねーよ!!」
桐生は鬼コーチに「やめろ!!」とまで言われる。

練習が終わると、1人誰も相手にせず…宿に戻る。

部屋の中で1人寝込む桐生…
「やはり俺はダメなんだ…」
「実力が無いんだ…」
「皆はしっかり出来てるのに、俺だけなぜ…」
「実力が無いって事は、根性も無い事になるじゃないか…」
「根性があれば実力だってある程度は付くはずだ、だけど実力が…無い…」
「何も変わってないって事はやはり根性も無いって事なんじゃないのか…」
「こんなんじゃ、彼女だって俺のことを嫌になるだろうよ…」
桐生は自分を責めながら、このような現状を桐生は誰にも判ってくれないだろうとも考えてた…

その次の日の練習…
夜は昨日の事で考えすぎててたのか、桐生はぐっすり眠れられたらしい。
宿から練習場に1人で向かっていると、日野という今回の合宿に参加してる先輩の部活生が桐生に話し掛ける。
日野「よう、桐生」
桐生「日野先輩…」
日野「元気出せよ。あれは鬼コーチの性格なんだ。しかたがないよ。」
桐生「……」
日野「とにかく、昨日の事は良くないと思った事をよく頭にいれて、叱られたことは忘れろよ…な。」
桐生「……」
日野「俺等だって、入学して以来、ずっとあの鬼コーチとは長く付き合ってるんだ、俺だって、クズとかザコとか言われまくったんだから。」
桐生「…そうなんですか…」
日野「そりゃ、そうだよ……あ、もうこんな時間!! おい!! 走ろうぜ!! 時間におくれちまう!!」
桐生「は、はい!!」
…そうなんだ、俺が今から行く道は地獄のようにきつい。そう、地獄のようにきついことなんだ。しかし、彼女の言葉を信じて……
俺は…大丈夫なんだ。と、桐生は今までの考えは間違っていた事を思いながら、これからも部活に励んでいくのである。

そして今、桐生は影から彼女の応援を受け、日々部活生として成長を続けているのだった……
 

〜あとがき〜

ども、僕もちょっとSS考えてみようかなと思い。今回制作してみました。
と言っても、これが初のSSなんですけどね(^^;
ストーリ的には、楓子ちゃんよりもむしろ、主人公の部活の日々の方に行っちゃってしまい、
楓子ちゃんファンの方々にはかなり申し訳ない作品になってしまいましたことをお詫び申し上げます(汗)
けど、主人公の厳しい現実と言うのを重点とし、かなり重々しく仕上げようと考えましたので…


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