楓子ちゃんを守る会・八重桜交流SS
 「内気な心」   作:子龍


「おっす!オラ、ドラサンズ…じゃなくて西山喜久蔵!ひびきの高校2年H組に所属する、今一押しのナイスガイさ!
 今日はひびきの高校体育祭!午前中の競技が終わって、今は昼休み。昼飯も食い終わって、優雅に中庭を散歩としゃれこんでるとこだぜ!」

……非常に説明的なセリフありがとう。一部誇張表現があるものの、そういうことらしい。

「しっかし、我が愛しの楓子ちゃんはどこにいるんだろう?去年の11月28日に初めて会って以来、一度も見かけないよ…。
 テストには名前が出てたから、登校はしてると思うんだけどなぁ。
 まさか、不登校生徒とか?髪染めてるし、不良だったりして……ははは、そんなことないよね」

ひびきの高校はリベラルな校風だから、髪の色を染める(?)のも自由だった。

「さて…午後からの競技を見に行くか。ちょっと近道をしていこう」

「あっ、西山くん、入っちゃ駄目!」

「えっ、おっとっとっと」

ドシン。

「いってー」

「西山くん、大丈夫?」

「あ、か、楓子ちゃん!どうしたの、いきなり大声を出して」

「ごめんなさい。でも、そこは花壇なの。ほら」

そう言って楓子が指さしたのは、西山の進行方向にあった花壇に、整然と植えられている小さな花の芽だった。

「まだ芽は小さいけど、これから大きくなって、花を咲かせるのよ」

かがみ込む格好になる楓子。その目は、世界で一番愛おしいものを見つめるかのようだった。

「そうだったんだ、ごめんね。芽を踏むところだったよ。でも、よく知ってるね」

「うん。実はこの芽の種は、私が春に蒔いたものなの」

「へーえ、全然知らなかったよ。今度から気を付けるね」

「うん、ありがとう。それじゃ、午後の競技を見に行きましょう」

「そうしよう」(楓子ちゃんってやさしいんだなぁ)
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「…ところで楓子ちゃん?」

「え、なぁに?」

「あの花壇に植えた種って、何の花?」

「えへへ、じゃこうナデシコっていうんだよ」

「えっ、じゃこうナデシコ?」

「私の好きな花なんだ。花言葉も、知ってるわよ」

「えっ、花言葉?何て言うの?」

「じゃこうナデシコの花言葉はね」

「花言葉は?」

「同性愛、って言うの」

「同性愛?ふーん。そうなんだ…って、ええっ?」

「私の心と同じね」

「な、何か言った!?」

「ううん。なんにも…。あ、お姉さま!」

「え、お姉さま!?」

その視線の先には、神秘的な魅力を持った物静かな少女…八重花梨桜がいた。

(そ、そんなバカな〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!)
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「朝〜朝だよ〜。朝ご飯食べて学校行くよ〜」

ガバッ!!

「あ、あれ?ここは…俺の部屋…。はぁ、夢か。夢オチだなんて、作者も程度が知れてるな…」

余計なお世話だ。

謎の目覚まし時計を止め、身支度を整えて西山は学校へ向かう。今日は体育祭なのだ。

「ふぅ、昨日は最悪の夢だったな。縁起でもない…」

学校へ続く坂道を駆け上がりながら、西山は昨日の夢を思い出す。

「まさかとは思うけど、一応花壇を見に行こうかな。このままじゃ集中できないし」

西山は校門をくぐると、足早に中庭へ向かった。馬鹿馬鹿しいと思いながらも、何か胸騒ぎがしたのだ。 そして花壇の前に立った時、西山は愕然とした。 楓子が春に植えたという、夢で見た花の芽が確かに植えられているのだ。

「ぐ、偶然に決まってるさ。似たような花の芽だ、きっと!」

そう強がりを言う西山の顔は、自分で思っているよりも情けない表情だった。

と、そこへ二人の女生徒が仲良さげに歩いて来る。

「ねぇお姉さまぁ、今日も家に遊びに行っていいですか?」

「…また?昨日も一晩中一緒にいたじゃない…」

「だってぇ、いつでもお姉さまと一緒にいたいんだモン!」

「ふふ、しょうがない子ね…」

二人が西山の前を通り過ぎて数分後、水島○司式石像と化していた彼は我に返った。

「うおおおおぉぉぉおお!!!この世に神も仏もあるもんかぁあああ!!!」
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…数分後、焦土と化した中庭の中心に立っていた人影は、一人寂しく家路に向かっていた。


−こうして、俺の高校生活は事実上幕を閉じた。

思えば、チャットにばかり顔を出していたような気がするなぁ。

何はともあれ、無事卒業できて本当に良かった。

就職もできたし、何も言うことはないな。

そういえば、楓子ちゃんと花梨桜さんは、後夜祭のE組・F組合同の劇の練習をしていただけだったようだ。
些細な勘違いから、以来、二人にはすっかり怯えられてしまったようだ。

じゃこうナデシコは、別名カーネーションと言って、「あなたを愛する」という花言葉だそうだ。(桃色の花)
呼び方が変わると、花言葉も変わるらしい。

以来、ひびきの高校の中庭と、とばっちりを受けた渡り廊下、体育館裏は現在も閉鎖されているという。

この学校の伝説が永遠に語り継がれるように、俺一人の愛は永遠なのだから…

♪窓に 映る 景色は 偽りに あふれて〜ぇ♪



〜痕掻き(?)〜

どうも!このSSを作りました子龍です。

…花梨桜さん全然出てないやん(汗)すみません、八重桜の皆さん…(平謝)

このSS書くために、久々に前作をプレーしました。セリフもほぼそのまま引用…(^^;
でも、やっぱり『1』も良いですね。リリンの生み出した文化の極みだよ(違爆)

実はこの話のネタ振りを、1ヶ月ほど前のひび高の体育祭準備掲示板に書きこみしてあったりします。
つまり、じゃこうナデシコの花は、実際にひび高の中庭の花壇に植えられているわけです。
それを見た&覚えている方、お友達になりましょう!(笑)

ではまた次回に!(ネタあるのか?)


『ときめきメモリアル』及び『ときめきメモリアル2』は、コナミ・KCETの作品ですが、 このSSのヘッポコさとは一切関係ありません。