すべてはあの日から始まった。

かなり蒸し暑かった夏のあの日

初めて感じた胸のときめきは

ずっとあなただけのものだよ・・・・・。

 

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  夏と言えば夏祭り!記念SS

    「夏の約束」

  著者 ドラサンズ

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「ちょっと早く着きすぎたかなぁ」

 
日に焼けた顔がいかにも高校生らしくて初々しい。
彼の名前は柴崎君。最近着々と力を付けているひびきの高校の主砲である。
今年は惜しくも予選大会の決勝で敗れてしまい、甲子園には行けなかった。
だが、そのおかげで今こうして神社で女の子とデートができるのだからその心中は複雑である。

 
「こんばんは。柴崎さん。」

「あっ楓子ちゃん。」

「待った?」

「今来たところだよ、俺も。」

「えへ、良かった!じゃ、行きましょ、ね?」

「ああ、そうだね。行こう!」

 

ちょっと遅れてやって来たのは野球部のマネージャー、佐倉楓子である。
野球部のアイドルである楓子は柴崎ととても仲が良い。
部員の中にはすでに2人が付き合っていると思っている人がいるそうだが、
知り合って2年経った今でもお互いに手をつないだこともなく、
残念ながらまだ「恋人」の関係とは呼べない仲である。

 

「あぁ・・・すごい人ね。とっても縁日らしいけどぉ。なんだかワクワクしちゃうな。」
(楓子ちゃん、嬉しそうだな。なんだか、今にも走り出しそうだよ!)

「でも、今日は浴衣だからおとなしくしなきゃ。つつましく、だよネ。」

 

(浴衣っていいよなぁ・・・)

柴崎は、楓子の浴衣姿にしばらく見とれていた。

「私の浴衣どう?おかしくないかなぁ?」

心配そうに楓子は少し小声でたずねた。

「す、すごく似合っているよ、可愛いよ。」

自然と口から「可愛い」という言葉が出た。

「そ、そう・・・?あ、ありがと・・・。嬉しいな。」

そう言って顔を赤らめる楓子を見て、柴崎は思わず笑った。
それにつられて楓子も笑う。実に微笑ましい光景である。

「じゃあ、ちょっとその辺を見に行こうか?」

にっこり笑った柴崎は楓子の肩を軽く叩き、鳥居に向かって歩き出した。

「うん、行こっ♪」

下駄をカランコロンと鳴らしながら、足早に楓子は柴崎の後を追いかけて行った。
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あんず飴を食べたり、射的でトカゲのぬいぐるみをゲットするなど2人は時間も忘れて
夏の夜を満喫していた。しかし、祭りの時間も終わりが近づいたのか家路に向かう人も
多くなっている。

「次はどこに行こうか?たぶんこれが最後になると思うけど・・・。」ー

楽しかった夏の夜の終わりと、楓子との時間があとわずかな事を名残惜しみつつ、柴崎はたずねた。

「うーん、じゃあ金魚すくいしない?・・・ねっ♪」

「金魚すくいかぁ・・・よし!やってみよう!」

2人が最後に選んだのは金魚すくいだった。
実は去年の夏、柴崎は20匹の金魚を楓子の前ですくっていたのである。
もちろん今年もそれと同じ、いやそれ以上の成果を期待しているのであろう。
ところが・・・

「ナっ、ナマズぅぅぅ!?」

「えぇ?あっ!ホントだぁ♪カワイー!」

金魚がいる水槽の中にはなんと巨大ナマズがいたのである。
あまりの巨大さに、ふつうの腕では到底すくえる相手ではない。

「か、楓子ちゃん。ナマズ欲しい?」

イヤな予感を感じつつ、おそるおそる柴崎はたずねた。
なんといっても楓子はハ虫類が好きな女の子である。
そう考えれば、もしかしたらナマズも好きかもしれない・・・。

「そうね、ナマズさんとっても可愛いから欲しいなぁ。
それとねウチには池があるからちょっとくらいおっきくても飼えるよ。」

(やっぱし・・・そうなるとは思っていたけどさ・・・)

周囲の期待を決して裏切らない、予想通りのナイスな回答であった。
柴崎は覚悟を決めて、楓子の期待に応えるべくナマズ取りに挑むことになった。

「柴崎さん、頑張ってね!」

「おぉ!頑張るぜ〜!絶対に獲ってやるぞ!!!」

 

そして柴崎とナマズとの熱い戦いが始まった。
小さくて薄い紙でナマズを獲るなど普通ならば無理もいいところである。
しかし、幼少の頃より「金魚すくい名人」の名を欲しいままにしたプライド、
そして何よりも楓子の応援が柴崎の心を奮起させた。そして・・・。

「獲った!ナマズさんゲットだぜ!」

(なぜ「さん」付けかは聞かないでいただきたい。)
(ついでに「ボ○モンゲットだぜ!」と似ているがそこには触れないでいただきたい^^;)

これが男の執念とでも言うのであろうか、柴崎はなんとナマズ取りに成功したのであった。

「うわぁっ!すっご〜い!ホントにすごいよ、尊敬しちゃう!」

興奮した2人はいつしか手と手を取り合い、辺りを飛び跳ねていた。

 

「・・・ハッ!!」

2人はほぼ同時に我に返り、つないだ手を離した。
お互いの顔はりんご飴よりも赤く染まっていた。

「か、楓子ちゃん・・・手、つないじゃったね。」

「う、うん。そっ、そうだね・・・」

明らかにぎこちない言葉を交わした後、2人の間に沈黙が漂った。
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 「楓子ちゃん。もう遅くなっちゃったし今日は帰ろうか?」

柴崎はそう言って、ナマズの入った袋を片手に楓子のいえの方角に向かって歩き出した。

「柴崎君、今日はとっても楽しかったよ。また来年行こうよ・・・ねっ?」

また来年、その言葉が柴崎にはちょっとだけ引っかかったので、いたずら心からいじめてみる。

「オイオイ、来年こそは楓子ちゃんを甲子園に連れていくって約束したじゃん。
だから来年の今頃は毎日ボールを追いかけてるってばぁ。」

「そっか、そうだよね。じゃあまた再来年だね。約束・・・だよ。」

「うん、わかった再来年、絶対にここに来ようね。」

そういって2人は楓子の家の玄関前で約束を交わし、別れた。
それにしても早くも2年後の約束をしてしまうなんて・・・気の早いお2人だこと(笑)

 

その後2学期になった時、楓子は大門高校に転校してしまったが、
2人の関係は長距離電話で固くつながっていた。
そうした楓子の支えもあってか、柴崎は翌年、ひびきの高校を甲子園大会に導き、
初優勝に大きく貢献をした。

そして高校卒業後・・・ついに2人は恋人同士になった。

今日は夏祭りの日、伝説の鐘の下で永遠の愛を誓ったあの日以来、始めてのデートである。

「楓子ちゃんはまだかなぁ・・・?」

柴崎は2年前と同じように、鳥居の前で楓子を待っていた。

「柴崎くん、待った?」

息を切らしながら楓子が近づいてくる。

高校時代と変わらぬ、愛らしい姿を見て思わず柴崎は笑った。

「いいや、僕も今来たところだよ。」

「じゃあ、行こっ!・・・ねっ♪」

楓子は自ら柴崎の手を強く握った。それに応えるように柴崎も楓子の手を握り返す。
場所は2年前と同じ神社の夏祭り、でもあの日と今は大きく違う。

だって2人は恋人同士なんだモン!

今日も明日も明後日も・・・ずっと、ずぅっと・・・ねっ♪

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あとがきのような物

構想は3月から出来ていたのですが、やはり「縁日」といったらここまで引っ張りたかったので今頃になって書き上げました。
また、出演してくださった柴崎洋魔さん、どうもありがとうございましたぁ♪

内容は後半部分に強引さがあったみたいな気がしてまして、必ずしも合格点を与えられるとは思えません(^^;
また、手をつなぐことだけでもドキドキしてしまう描写をもっと良く書き表せなかったかなぁと反省してます。
これに懲りずに、また書くと思いますのでどうかみなさん温かい目で見守ってください(笑)
またよろしかったらSSの感想、苦言、改善点、その他なんでも教えてくださると助かりますので重ねてお願いします。

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すでにご存じだと思いますが、「ときめきメモリアル2」はコナミさんが作ったゲームですよ♪
このSSと関係があるかどうかはたぶんないかと・・・。
 

 


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