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  夏だ!野球だ!中日だ!(?)記念SS
  
      『あの夏の日』 ぱーと@
  
      〜あれからずっと・・・
 
  企画:楓子ちゃんドラゴンズファン計画実行委員会
  著者:たぶんドラサンズの陰謀らしい

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〜夏といえば野球の季節だよね。
 高校野球もいいけれど、ナイター野球も楽しいよ・・・ねっ?


はぁはぁはぁ・・・

「あーもうすぐ8時になっちゃうよぉ。
間に合うかなぁ〜?」

夏とはいえ辺りは暗くなるこの時間、髪を振りかざして坂を勢いよくかけ上がる一人の女子高生がいた。

「おばさ〜ん!あれ!いつものくださーい!」

『いつものあれ』で店の人がわかるという事は常連さんの証である。

「あら?楓子ちゃん、今日はずいぶん遅かったのね。
いつもの本なら大丈夫♪ちゃーんと取っておいてあるわよ、ハイ今月の月ドラ。」

「わぁい、よかったぁ。売り切れじゃなかった・・・ホッ」

たった今、安堵の息を漏らしたのはこの物語の主人公の佐倉楓子ちゃんである。
ひびきの高校野球部マネージャーとして日々健気に働く彼女の月1度の楽しみ、
それがこの本「月刊ドラゴンズ」通称「月ドラ」を買うことである。

「今月の表紙は・・・あー!立浪さんだぁ♪やったぁ〜。」

「おや?楓子ちゃんは立浪選手のファンだったの?おばさん初めて知ったわ。」

「えっ!?そっ、そうだったっけカナ?」

心なしか彼女のの頬が少し赤らんだ。

「あっ!いっけなーい!弟のゴハン作らなきゃ!じゃあおばさんまたね。」

足早に店を跡にし、彼女は家路についた。
そして弟たちにちょっと遅くなった夕飯を食べさせ、部屋に戻る。

「ふぅっ、今日も一日頑張りました♪さてと、月ドラ読まなきゃね。
あれ?もう11時だ・・・明日も朝練なのに・・・う〜んどうしよう?
仕方ないね、明日学校で読もうカナ。立浪さん、おやすみ。」

読みたい気持ちをグッとこらえて彼女は眠りについた。
この辺りの自己管理が出来ている所はさすが野球部のマネージャーである。

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「おはようございます!」

元気な挨拶とは裏腹に彼女は内心ホッと胸をなで下ろしていた。

(危なかったぁ、もうちょっとで遅刻だったよぉ・・・)

「おう!佐倉。おはよう!今日も張り切っていくぞぉ!」

突然後ろから声を掛けられ、ちょっとびっくりしながらも彼女は笑顔で振り向いた。

「おはようございます!須貝先生。今日も黄色いリボンがお似合いですね♪」

「うぐっ!・・・まっ、まあな。あっ、あはははははっ!」

頭に巻いたトレードマークの黄色いリボンの事を突然言われたからか、
大柄な野球部監督はちょっと動揺しつつ笑ってごまかした。

(だめだ佐倉、リボンの事に触れてはならない。
ましてや「楓子ちゃんを守る会」と書いてあることを知ってはならないぞぉ・・・。)

朝一番から危機に立たされた須貝先生は話題を変えるべくポケットから2枚の紙を取り出した。

「そうだ佐倉、野球のチケットが2枚余っているんだが・・・いるか?」

彼が取り出した紙は野球のチケット、対戦カードは虚人−中日戦の外野自由席だった。

「えっ!?欲しいです!・・・でもぉ、もらっちゃってもいいんですか?」

「もちろんだよ。でもこれは今日の試合だから、夕方までに一緒に行く人を誘うんだぞ。」

「先生は行かないんですか?」

「う、うん。一緒に行く予定だったやつが急にダメになってね。だからこれは2枚とも佐倉へのプレゼントだよ。」

この時、須貝先生は一瞬ではあるが後悔した。
そう、もしかしたら楓子ちゃんと野球デートが出来たのかもしれなかったのにね。
あーぁもったいない、もったいない(笑)

「じゃあ、喜んでいただきます。ありがとうございました。」

満面の笑みの彼女を見て、彼はホッと胸をなで下ろした。

(よかった。これ以上、リボンについてはつっこまれずに済みそうだ・・。)

だが現実はそんなには甘くない・・・。

「ところで、先生。そのリボン何か文字が書いてありませんか?
『〜ちゃんを守る会』とかって・・・。」

(やばっ!)

「あはっ、あはははっ!そ、そんなことより、気を付けて行くんだぞ。じゃ、じゃあな!」

明らかに動揺をしている言葉を残し、須貝先生はその場から全力で走り去った。

「???・・・どうしちゃったのカナ?変な先生?
まぁ、いいっか。さてと、誰を誘おうかしら?どうせなら中日ファンの人と行きたいモンね♪」

気を取り直した彼女は、早くも今宵のエスコート相手を誰にしようか考えていた。

「おっはよー!楓子ちゃん。今日も可愛いね♪」

朝からナンパかい!と思わせる口調で近づいてきたのは、野球部期待のホープ
足は速いが手も早い2年生、けんやであった。

「あっ、おはよう。けんや君はいつも元気だね。」

「あれぇ?楓子ちゃん何持っているの?あっ!野球のチケットじゃん!いつの試合?」

機関銃のようにけんやは彼女に質問を投げかけた。

「うん、そうなの。今ね須貝先生に貰ったの。今日の試合なんだよ。」

「対戦カードは?おぉ!虚人戦じゃない。場所はひびスタだね。」

ひびスタとは、ひびきの市が誇る収容人数5万人の「HIBIKINO STADIUM」の事である。
野球・サッカー・ラグビーなどの試合が盛んに行われるが、プロ野球のナイター試合は滅多に行われず
ある意味、今日の試合のチケットはプラチナチケット級に入手困難な代物であった。

「誰と一緒に行くの?」

「うーんとね、まだ決めていないの。」

この瞬間、けんやは今まで信じた事すらなかった神に感謝した。

(神さま、サンキュー!絶好のチャンスだ。楓子ちゃんとデートだモン!)

しかし、この時点で、彼はこの『絶好』のチャンスが『絶交』のチャンスになるとは思いもしなかったであろう・・・。

「じゃ、じゃあさぁ俺と一緒に見に行かない?今日ヒマなんだ。一緒にライトスタンドで盛り上がろうよ。」

勇気を出してけんやは楓子ちゃんにアタックを試みた。

「えっ!?ちょっと待って。今『ライトスタンド』って言ったよね?ひょっとしてけんや君は虚人ファンなの?」

微妙に彼女の表情が曇ったが、舞い上がっているけんやにはそんな細かい所までは目が行き届かなかった。

「うん、そうだよ。じいちゃんが虚人ファンで、父さんも虚人ファン。そして俺も同じ。やっぱ野球は虚人でしょ!」

「ふぅん、そうなんだぁ。じゃあ一緒には行けないね・・・。」

「へっ!?」

なにがなんだか状況が掴めず、けんやは戸惑いを隠せなかった。
しかし、次の瞬間彼は楓子ちゃんの右手にある恐ろしい物を目にするのである。

(『月刊ドラゴンズ』だとぉ〜!)

頭の中が真っ白になっているけんやに向け、更に追い打ちをかけるように彼女はこう続けた。

「私ね、野球は好きだけど『虚人だけは絶対に許せない』の、だからけんや君とはもう一緒には野球は見に行けないね・・・。」

「・・・・・」

『もう・・・』の続きが最悪の事態ではなかった事は彼にとって唯一の救いではあったが、
哀れなりけんや君・・・合掌(笑)

そして文字通りの灰になって立ちつくしたけんやに背を向け、彼女は部室へと向かった。

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部室に入ると、そこにはグラブを磨く1人の野球部員がいた。
彼は今年の春、ケガをしてレギュラーから外されていた2年生の五味である。

「おはよう、五味君♪今日も早いんだね。ケガの調子はどう?」

部員の体調をすかさずチェックする所が、彼女が野球部のナンバー1マネージャーであることを
印象づけるものである。

「あっ!楓子ちゃんおはよう。ケガはもうだいぶ良くなったよ。
来週辺りからシートノックを受けても大丈夫だって医者も言っていたからね。
ところで、今持っているのって今月号の月ドラだよね?よかったら後で読ませてくれないかなぁ?」

(著者:今までとは180度違って、清々しい会話を書いているなぁ・・・(笑)

「そっか、じゃあ来週からレギュラー復帰目指して頑張ろうね。
それより、この本ドラゴンズの事しか出てないけどいいの?」

「あぁ、全然構わないよ。だって俺中日ファンだし。」

思いがけない五味の一言に、彼女は驚きと喜びを感じた。
まさかひび高に自分と同じ中日ファンがいたなんて、しかもこんなに近くにいるなんて夢にも思わなかったであろう。

「五味君が中日ファンだったなんて今まで知らなかったよ。・・・ねぇよかったら今夜ね・・・。」

そう言うと彼女はおもむろに五味の前にチケットを差し出した。
『一緒に行こうよ』とは言えなかったが彼女なりの精一杯の誘い方である。
そんな彼女のいじらしさを既に承知していたかのように、五味は笑いながら言う。

「これ、今日の中日戦のチケットだね。しかもレフトスタンドだ。
ねぇ、もしチケットが余っていて、それで俺でよかったら一緒に行ってもいいかな?」

『待ってました!』と言わんばかりの期待通りの五味からの誘いに、彼女は笑顔でうなづいた。

「もちろんだよ、試合は18時からだからぁ・・・えーっとぉ・・・」

「それならば16時半にバス停っていうのはどうかな?
自由席だし、どうせならば一番盛り上がる応援団の側が良くない?」

正に以心伝心である。彼女は少しでも早く球場へ行きたいと思っていたのである。
平日ならば到底無理な時間であるが運の良いことに今日は土曜日だった。
授業は午前中までで、練習は長くても15時には終わる。16時半はベストの待ち合わせ時間なのであった。

「うん、わかった。そうしましょ。今日の試合は絶対に勝てるように一生懸命応援しようね。」

こうして彼女は無事、一緒に行く相手を得たのであった。
しかし、彼女はこの後一旦家に戻るまでの間の時間、終始ボーッとしていた。
もちろん授業のノートは白紙、それに伴って先生に怒られること5回、
午後の部活でも部員みんなのために毎日やかんに作っている麦茶を
今日に限ってなにをどうまちがったのか、カルピスウォーターにしてしまう程の『おまぬけさん』ぶりを発揮してしまった。

そして彼女をそんな風にしてしまったのは、こんな事をずっと考えていたからである。

(もしかして、これってデートなのかなぁ?普通に考えればそうだよね。
今まで五味君はかっこいいなぁって憧れてはいたけど、野球部の仲間だとしか思っていなかったのに・・・。
あれ?なんで顔が熱いんだろう?・・・いやだ!私ったら・・・。)

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とりあえずのあとがき

「あの夏の日」ぱーと@でした。本当は一話目で完結させる予定でしたが、予想以上に長くなりそうなので続き物にする事にしました。
正直言って今のところ二話でも完結させられるかが怪しくなってます(笑)
今回は以前に柊さんがお書きになった楓子ちゃんが「どうして野球を好きになったのか?」の続きとして
「じゃあプロ野球だったらどこのチームが好きなのか?」について書こうと思ってこのSSを書き始めました。
「楓子ちゃんドラゴンズファン計画」(爆)という企みでもありますが、まぁ温かい目で読んでやってください(^^)
中日じゃイヤだ!という人はお好きなチーム名に変えて読んで下さいね(^^;
最後に今回の私のSSに出演してくださったみなさんをご紹介して、第一話目の締めとさせていただきます。

「あの夏の日」第一話 出演者

 佐倉楓子(主演)    役名 楓子ちゃん(ひびきの高校野球部マネージャー)
 アミーゴさん       役名 けんや君 (ひびきの野球部2年期待のホープ)
 子龍さん         役名 五味君  (ひびきの野球部2年ケガからの復帰を目指す)
 スカイシューターさん  役名 須貝先生 (ひびきの高校野球部監督) 

 主演の楓子ちゃん以外は50音順です。
 お名前をお貸ししてくださったお三方、ありがとうございます。

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「ときめきメモリアル2」は偉大なるコナミ様がお作り遊ばされたゲームでございます。 


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